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何かが居る・・・
友人のブログを読んでいて、思いだした話がある。

それはもう30年も昔のこと。
あるテレビ番組のロケを、九州のM県で行ったときの出来事だ。

こんな仕事をしていると、地方に泊まる機会が多い。
なかには、恐ろしい噂のある宿に泊まったり、
実際に、身の毛もよだつ体験をしたり・・・ということも少なくない。

あの日も、ホテルに入った瞬間に感じた。
「ここには、何かが居る・・・」

ただ、40名を超えるロケ隊を受容れてくれる宿は多くない。
山の中の一軒宿だったそのホテルが、4日間もの宿泊を認めてくれたのは、
奇蹟に近いことだったのかもしれない。

地方ロケは体力勝負。
一日中陽の光を浴びながら走り回る、過酷な仕事だ。
撮影を終えて遅い夕食を摂り部屋に戻ると、クラクラするような眠気に襲われる。
なんとかシャワーを浴びて、倒れ込むよようにベッドに横たわった。

クラシックな洋館のようなホテルの部屋は、
私が一人で寝るには広過ぎる10畳ほどの洋室。
電気を消すと、ガランとした部屋のなかに、またアレを感じた。
「何かが居る・・・」

それでも疲れ切っていた私は、いつの間にか眠りに落ちていた。

どれほどの時間が経ったのだろうか。
どこからか、コンコンと何かを叩く音がする。

コンコン。

コンコン。

窓の外だ。

耳を澄ますと、はっきりと聞こえてきた。
コンコン、コンコン。

だが窓の外は真っ暗な森のはず。
人が立ち入れるような場所ではない。

恐ろしくなり、布団を被って息を潜めた。

コンコン。

コンコン

ドンドン。

音が大きくなった。
まるで乱暴にノックをするように窓を叩いている。

眠れない!
このままでは、明日の仕事にも差し支える

思い切ってベッドを抜け出し、部屋の灯を消したまま、
そろりそろりと窓辺に近づいた。

分厚いカーテンを一気に開ける。

そこで私は信じられない光景を目の当たりにした!

2頭のシカの、大きな頭が目の前にあったのだ。

驚いて固まっている私に向かって、1頭がその長い角を突き出した。
コンコン。
ノックをするように、窓ガラスを叩く。

えっ・・・・・。
えーーーーーーーーーーっ!?

シカの角だったの???

よく見ると、他にも5、6頭のシカが森のなかに居る。
明けはじめた空は曙色に輝き、森にはうっすらと靄がかかっていた。

M県のEホテルでの出来事。
芸能生活が長いと、いろんなことを経験する・・・。
| 石井めぐみ | 20:45 | - | - |